「――は?」


五月晴れの昼下がり、ベランダに出ていた燈磨の隣に座るあたしは肩身が狭い。


ちぃ君と話してから数日後、やっと決心がついた。


「……だから、忍に会いに行こうと思うの」

「だから、何でそうなんの?」


ああ、だから嫌だったのよ。怒られるの苦手なのに……。 


「何でも何も……会いに行きたいだけよ」


そんな怖い顔しなくたっていいじゃない! そりゃ燈磨はのんの味方だって分かってるけど!


「お前、この前何されたか分かってんの? リボンすら自分で返しに来ねぇし、話し掛けてもこねぇ。挙句告ったか聞かれてキレ気味だったんだぞ。アレか? お前の頭は飾り物か?」


黙るあたしに燈磨は大きな溜め息。


腹立ってます。そんな空気を惜しげもなく醸し出す燈磨だけど、引くわけにはいかない。


「会いに行って、忍の気持ちが変わるなんて思ってないわよ。ただ、会いたいだけなんだから……そんなに怒らなくたっていいじゃない」

「お前の気持ちは聞いてねぇよボケ!」

「味方してって言ってるわけじゃないでしょ!?」

「のんの気持ちも考えろって言ってんだよ!」

「俺は別にいいよ?」


今にも喧嘩を始めそうだった時、頭上から聞こえた声に恐る恐る見上げると、教室の窓からのんが顔を出していた。


「会ってきなよ、苺」

「のん! 頼むよ、何でお前はそう甘いんだよ!」

「あは。燈磨は厳しいね」


ガクッと肩を落とす燈磨とは対照的に、のんは肩を上下させて可笑しそうに目を細めた。