驚きを隠せんとばかりに、
目を開いて。

「…あの?」

私は怪訝な顔で見た。

はっ、と彼は表情を取り戻した。

「失礼」

唇の端を微かに上げて詠輝さんは言った。

「珠輝、さん…みょ、名字は?」

そう尋ねられ、
紅茶をもう一口啜ると
私は答えた。

「海音、です」

海の音と書いて、あまの。
私はそう付け足して言った。

そう言った瞬間に、
詠人の父親の纏う空気が
いっきに重くなった気がした。