私は素直に頷いて、
そのテーブルのそばに座った。

「ありがとうございます。…いただきます」

そう言って
コップを手にとる。

紅茶だった。

湯気が漂っていて、
喉を通ると体が温まった。

「美味しいです」

一口飲んで、私はそう言った。

詠人も私の隣に座って紅茶を飲んだ。

「良かった」

柔和な、笑み。

「私は詠輝といいます」

彼がいう、私という一人称は
あまり似合わない気がした。

私も軽く頭を下げ、
名前を述べる。

「珠輝と申します」

そう私が言ったとき、
詠人の父親――詠輝さん――の
目が大きく開かれた。