「いや、それが」

詠人は私の隣、
ベッドに腰を置いた。
ギシッ、と音がして
詠人は頬をかいた。

「父さんが、なんか…」

詠人は言い淀み言葉を失った。

「父さんが、何?」

私は聞き直した。

「彼女か、って張り切って挨拶がどーのこーの…」

詠人は視線を宙に彷徨わせた。

「………」

私が言葉を失った。

「…いや、不都合はないけど」

「ありまくり。彼女じゃない」

私は引き継ぐように
溜め息のような言葉を吐いた。

「…まぁ、ごめん」

「………別に…」

そう引かれたら、
何を言うわけにもいかない。