『その呼び方は控えてもらえないでしょうか』

フェンリルはそう言いながら
私に鼻を擦りつけた。

「そうね」

私は目を細めた。

「よろしくね、フェンリル」

『マスター』

不慣れな呼び方が
少しだけくすぐったい。

「じゃあ、〈戻れ〉」

私がそう言うと
あの毛の手触りも
まるで嘘だったかのように

消えた。

残ったのは、光の粒。