胸元に刻まれていた、

赤い十字架から


血が流れていた。


ゾワッ、と
背筋に冷たさが駆けた。


「……な、に…?」


ドクンドクンと
心臓が脈打つ音がよく聞こえた。

「…どう…し、よ…っ」

今にも目からは
涙が零れ落ちそうだった。



ただ独りで、
泣くことは怖かった。


けど、そんな絶望にも似た感じを

振り払うように


「――珠輝ッ!!」

私の好きな人で、
私の腹違いの弟の――

「詠人っ」

天宮詠人の、声がした。