詠人の表情は、冷たくて
何の気持ちも伺えなかった。

「えい、と?」

私は掴んでいた
詠人の服の裾から手を離した。

なんだか、嫌な予感がした。

詠輝さんも何かを感じたのか
眉を潜める。


「……名前の由来なんか関係ねぇよ」


詠人の口から紡がれた、
低く響く声。

私は驚いて、肩を震わせた。

「つまりオレと珠輝は本当にきょうだいかよ」

詠人が私を見た。

眼鏡の奥の瞳には、
なんともいえない
闇が広がっている気がして
ゾクッとした。

そんな詠人は視線を変えて
今度は詠輝さんを見た。


「なんでオレたちがきょうだいなんだよ…っ!」


「ごめん、詠人――」

慌てて、
か細い声で詠輝さんが言った言葉を

「ふざけるな」

詠人は制した。