「僕はね、珠輝のお母さん…珠美さんと一緒にいながら、今の妻とも関係をもっていたんだ。
2人共、妊娠させてしまってね。
それで…先に珠輝、キミが生まれたんだ。
だから僕は、キミに名前をつけてから、逃げるように――逃げなんだけど――今の妻を連れて町を出た。
別の町で詠人が生まれて、そこで暮らした。
けど何故だろう…懐かしくなったのかな。
数年後にこの町へ戻ってきたんだ。
けど、こんなだったら…
戻ってこなければ良かったね。
別れた妻の娘と、後から生まれた息子が出会ってしまうなんて――」
それだけをいっきに話すと、
詠輝さんは深く深く息を吐いた。



