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私の後ろに詠人がつく形で、
階段を降りて
私はリビングに入った。
「お久し振りです。詠人のお父さん」
そう言って歪んだ唇。
こたつに入っていた
詠人の父、詠輝さんは
こたつから出て
張り付けたような笑みを浮かべ
「関係を絶ってと、言ったはずなのに」
私ではなく、詠人に向けて、
低い声で唸るように言った。
「ごめんね。惚れた女の子だから、無理なんだよ」
肩を竦めて、
いたずらっぽく詠人が言った。
「もうやめてくれ…!」
詠輝さんが頭を抑えて
低く乾いた声で言った。
「何をですか?」
私はわざとらしく
詠人の腕に自分の腕を絡めた。
これは詠輝さんにも、
私にも、
まだ知らない詠人にも、
残酷なこと。
「ごめんなさい。――アタシたちがきょうだいだって、知ってたんですよね?」
詠輝さんは俯いて、
詠人が私の隣で目を丸くした。



