「あぁ、詠人!」
私はそう言って笑顔を浮かべた。
「素敵な笑顔をありがとう。その美しさから僕は女神と崇めたい」
そう言って詠人が
私の右手をとり
それを口元まで持っていくと
手の甲にキスをした。
私は甘んじてそれを受け止め
詠人に微笑みを投げ掛けた。
詠人が珍しく
照れたような顔をして
銀縁の眼鏡を掛け直した。
「珠輝、休日なのに制服なんだ」
詠人が私の服装を見て言った。
そんなことを言う詠人は、
ワイシャツにネクタイ、
黒いスラックスで
あまり制服と変わっていないように思えた。
「制服、ある意味で勝負服な感じ」
ダークブルーのブレザーと
チェックのスカート。
ネクタイもきちんと着けて
マフラーを巻いている。
カバンも通学用のもので、
学校へ行くのと同じ姿だ。
「可愛いよ、次回はセーラー服ね」
「なんだそれ」
私は笑って、
詠人は肩を竦めると
「ま、入って。冷えちゃうでしょうし」
そう言って私を招き入れた。



