景色が早送りしたビデオのように
一瞬で流れた。
「はやっ!」
私はしっかりと
スレイプニルに掴まりつつ
器用にマフラーを鼻まで持ち上げた。
『すぐだよすぐっ!ほら!』
楽しそうな声が耳に届いた瞬間
異形の馬はピタリと止まった。
「はやっ!」
スレイプニルが止まったのは
ちゃんと詠人の自宅、
天宮家だった。
私は背から降り、
スレイプニルを本へ戻した。
ふぅ、と息を吐いた。
入るかな、
そう思った刹那
「――珠輝っ」
バタン、と音をたてて
玄関の扉が開いた。
そこから現れた詠人が
家の前に立っていた私のところまで駆け寄ってくる。



