この手で紡ぐ神の欠片




  *

日曜日、私は約束通り
詠人の自宅へ向かう。


「〈神を壊し、私が神となろう、北欧神話を織り、神話を紡ごう〉――スレイプニル」

私は自宅を一歩でると
〈神唄〉を言って白い本を開いた。

直後に、
ヒヒィン!と
馬の鳴き声が耳に入り、
それが現れた。

スレイプニルは、
最高神オーディンが乗っている
8本の足がある馬のことだ。

それが目の前にあると、
さすがに8本は気持ち悪いかなと少し思った。

「まぁ良いや」

馬具も着いていない異形の馬に
私は少し苦労して跨がる。

「スレイプニル、天宮家まで」

首筋を撫でながら言うと

『わかりましたっ』

少年らしい元気な声で
その馬は返事をして
ヒヒン、と高らかに鳴くと
風を裂いて走り出した。