「そういう人だなってわかってはいたのにね」
「人はわからないからねぇ」
私が軽くそう言うと
母は頷いて話を続けた。
「それから送られてきた離婚届。私たちは海音の姓に戻った」
一瞬だった、天宮の姓。
母はそう名乗れた時は
幸せだったと言った。
「それから――あなたが生まれて3年。今の父さんに会ったの」
母の表情が少し和らぐ。
その表情から、
そのときの安堵とか諸々が伺えた。
「お父さんが私の名字になって、詠輝さんとは挙げなかった結婚式をして」
それから、今へ繋がる。
「これが以上。ありきたりな話でしょう」
「…そうだね、だけど」
私は目を伏せる。



