この手で紡ぐ神の欠片




母は少し間をおいて、話を始めた。

私は母の前に立ちながら、
その話を聞いた。

「詠輝さんと私は付き合っていたの」

こうして立っていると
座っている母は小さく思えた。

「私があなたを身ごもると、詠輝さん…籍を入れてくれた。名字は海音から、天宮に変わった」

母は息を吐いた。
母は綺麗な方だと思うが、
やはり人は老いる。

「本当に、幸せだったの。…けど彼は浮気をしていたようでね」

母が肩を竦めてみせた。

私も肩を竦めた。

「あなたを生んで、彼はあなたに名前を付けると――逃げちゃった」

母は自嘲気味に笑った。