いつの間にか熱は冷め
私は冷静に聞くことができそうだった。
「幸せに、私たち3人は暮らしていると思っていたのに」
私たち、というのは
母親と――今の――父親と、
そして私のことだろう。
そう、幸せだったのだ。
霊が見えたり
色んな雑音(こえ)が
絶えず聞こえているし
疲れたりしているけれど
確かに私は幸せだった。
そして今も
幸せなのだ。
だけれどそれを
この手で壊そうとしているのは
生温い日常には
いつまでも浸かることはできないからだ。
いずれ冷めるであろう日常より
一度壊して
また本当に温かい日常に浸りたい。
その温かい日常とやらは
神話を使う“力”を
手に入れる前か、
それとも――…。
私は唇を引き結んでから
ゆっくりと言った。
「―――話して」



