詠人がいるから、無理だった。
…私はカンニングに
負い目や罪悪感を感じるタイプではない。
それだって、
戦略と作戦、ある種勉強だ。
深く笑顔を顔に彫る。
「手を切り取り、足をもぎ取り、でいこう」
「ある意味ホラーな手取り足取りだな」
言った私に
詠人は顔を引きつらせた。
「まぁまぁ、痴話喧嘩かしら?」
「違うっつの」
菜生のふざけた言葉に
私はすかさず抗議した。
詠人はと言えば苦笑いだ。
お前も何か言えっつーの。
私は沈黙に言葉を隠し、
詠人の腹に弱く拳を入れる。
「ぐほぉ」
馬鹿、笑ってんなよ。
私は舌を出した。



