私のその先の言葉は、
風に混じって消えた。
「――珠輝はさ、」
詠人が私の顔を見ずに
独り言にも思えるように
私に聞いた。
「この“力”は、嫌い?」
「……」
私は髪をかきあげた。
詠人が私を見た。
私は詠人の視線に応えず、
言葉にも答えず、
足元にあった小石を蹴飛ばしてみた。
「なぁ」
痺れを切らしたように、詠人が言った。
蹴った小石は、
変な方向に飛んで行った。
「――嫌いじゃないよ」
そう答えた私の顔は、
自分じゃ見えないけど、
少し笑っていたと思う。
「そう」
目が合った詠人の顔が、
優しく微笑んでいたから。



