そーゆーもんか、と
皮肉を交えて私は呟いた。
ケルべロスは答えなかった。
つまらない。
つまらなさ過ぎる。
私は本を開いた。
「〈神を壊し、私が神となろう、北欧神話を織り、神話を紡ごう〉」
口慣れた〈神唄〉を
淡々と言いあげる。
「――フェンリル」
呼び慣れた私の大狼の名前。
赤く塗られつつある公園に、
巨大な狼が現れる。
自然と、緩む口元。
「アタシの狼さん」
『…私が狼なら、赤ずきんですかね』
フェンリルが言った。
「うん。良い発想」
クスクスと笑った。
「暇だしさ、遊んで」
『――喜んで』
主人に逆らわぬ柔順な狼に、
私は目を細めた。



