『戻れないだけだ』

「……飼い主は、いないわけ?」

私は少し冷めた目で
ケルべロスに聞いた。

反応がつまらなかった。

フェンリルだったら、
もう少し楽しく話せるんだろうけど。

私の気持ちなど知らずに、
ケルべロスの首の1つが言った。

『私を探しているようだ』

「ふぅん。…あんたは迎えに行かないのかよ」

『必要ない』

「…いや、気持ちだけでも」

素っ気無いケルべロスの言葉に
私は言った。

ケルべロスは鼻を鳴らした。

『言葉が、気持ちそのものとは限らない』