私は髪をかきあげて、
息を吐いた。

吐いた息は白く染まり、消えた。

「あんたの主人って、誰?」

私はケルべロスに聞いた。

『教えはしない』

さすが冥府の番犬といったところか。
口が堅い。

「…あんたが返んなきゃ地獄から魂が脱獄しちゃうよ」

『弟をまわした』

「それで良いのかよ」

くっくっく、と私は笑った。

「弟って、双頭のオルトロス?」

『あぁ』

ふぅん、私は言った。
言ってから、

「…戻んないの?」

ケルべロスに尋ねた。