駆け抜けた風。

揺れる髪。

騒ぐ木々。

落ちた木の葉。


『――〈創造主〉とは、』

ケルべロスが口を開いた。
開いた口から、
鋭い犬歯と赤い舌が見えた。

『神話を使う者のことだ』


ケルべロスの言葉に、
私は頷いた。

「つまりは、神か」

その声に、笑いが混じった。

「ねぇ」

私は白い本の表紙に語りかける。

軽く、軽く。
戯れのように。

「アタシは神?あなたたちの神?」

本の中の神々からの
答えはこないのに、
そう私は問うて
ケルべロスは黙った。