私はガルムのそばに歩み
背伸びをして、
頭を下げてくれたガルムを
よしよしと撫でた。
毛の手触りが、気持ち良い。
私は手を離すと
白い神話の本を脇に挟み
フェンリル――と、下のケルべロス――の近くに寄った。
「えーっと、どうしようかなぁ」
誰にともなく呟いて、
私は2匹の様子を見た。
「…フェンリル、放してあげようか」
ケルべロスが
だいぶ大人しかったので
私はそう自分の狼に言った。
フェンリルはゆっくりと
その巨大な体躯を
ケルべロスから退けた。
『ふん』
鼻を鳴らしたのは、
ケルべロスだった。



