*

詠人は家の近くまで
私を送ってくれた。

「なんか、ごめん」

軽い言葉ではなく、
率直に彼は言った。

「いや、いい」

私は首を振る。

「茶髪が気に入らなかったのかも」

ふざけてみた。
詠人は申し訳なさそうに
少し微笑んだだけで、
なんか寂しくなった。

「珠輝、また来てよ」

良かったら、だけど。
控えめに詠人は誘った。

「懲りないねぇ」

嫌味らしく私は言った。

「あ、ごめ――」

「行くよ」

慌てて謝る詠人の言葉を
私は遮って続けた。

「紅茶が美味しかったから」

私は、嘘つきだ。