私はそう言って立ち上がった。

「父さん?」

詠人が父親を睨んだ。

そんな詠人の視線を無視して
父親は言う。

「詠人、送ってあげないのか」

何も答えず、
詠人は立ち上がった。

「珠輝、送る」

素っ気無い言い方だった。
否、これが素なのだろうか。

「悪いが――」

背を向けて
部屋を出ようとした私たちに
詠輝さんは言った。


「詠人との交際は、やめてもらえないか」