私や詠人も、
思わず押し黙った。

詠人は私と顔を見合わせ、
なんだろう、と言うように
顔をしかめた。

「…すみませんが珠輝さん――」

自分で作った重い沈黙を、
下手くそな苦笑いを浮かべ
詠人の父親、詠輝さんは言った。

はい、と私は言葉を伺う。

「用がありまして、帰っていただけないでしょうかね…」

申し訳なさそうに弱く、
だが断らせないように芯がある言い方だった。

「そうですか」

私は気を使うように微笑む。
それから、
紅茶をいっきに飲んだ。

「それでしたら、失礼いたします」