「うん、そうかも。でも……」
「でも何だよ?」
不機嫌な歩に萎縮する。
あまり悪く言うのは良くないってわかっている。
本当は自分がどんな気持ちだったか全て吐き出したいが、抑えて小さな声で告げた。
「あの人、たぶんあたしのこと、良く思ってないと思う」
歩が大きくため息をついて、白い息がボワッと現れ、消えた。
「恵里さ、響子さんに好かれようと思ってたの?」
冷たい風に、冷たい目。
ブルっと身震いした。
「好かれなくとも、嫌われないようには努めるでしょ、普通」
「お前みたいなバカ丸出しな女が、あんな出来た人に好印象持たれるわけないだろ?」
冷たくなっていく体とは裏腹に、目頭が熱くなった。
息を吐いたら涙が漏れてしまいそうで、ぐっと息を堪える。
いくら相手が歩でも……そんな言い方、酷い。
私は、見下されて当然の人間だと言われているみたいだ。



