窓に影


「うん、そうかも。でも……」

「でも何だよ?」

 不機嫌な歩に萎縮する。

 あまり悪く言うのは良くないってわかっている。

 本当は自分がどんな気持ちだったか全て吐き出したいが、抑えて小さな声で告げた。

「あの人、たぶんあたしのこと、良く思ってないと思う」

 歩が大きくため息をついて、白い息がボワッと現れ、消えた。

「恵里さ、響子さんに好かれようと思ってたの?」

 冷たい風に、冷たい目。

 ブルっと身震いした。

「好かれなくとも、嫌われないようには努めるでしょ、普通」

「お前みたいなバカ丸出しな女が、あんな出来た人に好印象持たれるわけないだろ?」

 冷たくなっていく体とは裏腹に、目頭が熱くなった。

 息を吐いたら涙が漏れてしまいそうで、ぐっと息を堪える。

 いくら相手が歩でも……そんな言い方、酷い。

 私は、見下されて当然の人間だと言われているみたいだ。