窓に影


 響子さんに車で送ってもらい、私と歩は家の前で降りた。

「ごちそうさまでした」

 一応お礼を言うと、響子さんはキレイな顔でいいえと言って去っていった。

 家の前で、歩と二人。

 私がため息をつくと、白い息がいつもより濃い。

 歩は車が角を曲がるまで、彼女を見送っていた。

「キレイな人だね」

「だろ?」

「でもごめん。あたしにはいい人に見えなかった」

「は?」

 歩が少し怒った表情をする。

 当然だ。

 大好きな彼女をけなされて、いい気はしない。

 でも、率直な感想を言わずにはいられなかった。

「何それ? 妬み?」

 眉間にしわを寄せたまま、私を見下ろしている。

 妬みといわれれば、そうかもしれない。

 キレイだし、頭も良いだろうし。

 歩がそう言うのだから、きっと正解。