「歩、優しいから……私に文句なんてつけたことないの」
嫌われている私に対して、「私は文句の付け所がないほど好かれてるのよ」と言っているように聞こえる。
「それは、好きだからじゃないですか?」
「そうかもしれないけど、私が尻に敷いてるみたいじゃない? 年上だからって遠慮されてるような気がするの。だから言いたいことを言い合える恵里ちゃんが羨ましい」
厭味だ。
絶対に厭味だ。
そう捉えてしまう私の性格が捻じ曲がっているのか?
どちらにしろ、私は響子さんを好きになれそうもない。
やっぱり会わなきゃ良かった。
わざわざ歩に嫌われていることを再確認するために来たようなものだ。
「ごめんごめん」
電話を終えた歩が席に戻ってきた。
憎たらしさが二倍増し。
切なさが、十倍増し。
そんな心理状態のまま、私たちは店を出た。



