窓に影


 嫌われてるなんて、そんなのわかってる。

 私の家庭教師をしているのは、私のためじゃなくて響子さんのためなんだし。

「はは、そうですか。嫌な意味で気が合うみたい」

 痛む心を表に出さないよう、笑顔を作って見せた。

 響子さんもフフフと笑う。

 この時の、間。

 普通、嫌いだと言われた私にフォローをするところじゃないだろうか。

 本当に嫌っている相手には嫌いなんて言わないよ、とか。

 無言ゆえに伝わる、響子さんの言葉。

「あなたは歩に嫌われてるのよ」

 今まで美しく見えていた彼女が、急に嫌な女になった。

 愛想笑いをすることが更に辛くなる。

 顔の筋肉を休ませるため、私はすっかり温くなったコーヒーをすすった。

 彼女はそんな私の気を知ってか知らずか、追い討ちをかけてくる。