窓に影


「あ、ごめん。友達から電話かかってきた」

 ポケットから携帯を取り出した歩が立ち上がった。

 そのまま店外に出て行ってしまい、響子さんと二人になる。

 どうしよう。

 二人にしないでよ。

 何話せばいいのよ。

 一人で困っていると、響子さんの方から言葉をかけてきた。

「恵里ちゃんって、歩のこと好きだったりする?」

 えっ?

 それ、聞いちゃいますか。

 涼しい顔をして何てことを聞いてくるんだ。

「いえ、むしろ嫌いです」

 私の答えに、彼女の顔つきが一瞬変わった。

 彼女にこの答えは、少し失礼だったろうか――。

「そう。歩と全く同じ反応をするのね」

「同じ反応、ですか?」

「うん。あの子も恵里ちゃんのこと、むしろ嫌いって言ってたの」

 ズキン。

 胸が痛んで、危うく声が出そうになった。