私の中ではピリピリと緊張する食事の時間だった。
彼氏といるのに、言ってしまえば浮気相手が目の前にいる。
歩も同じ状況だ。
食べ終わった後もしばらく談話が続いた。
「俺トイレ」
歩が立ち上がると、悠晴も立ち上がった。
「じゃ、俺も」
二人でトイレへと去って行った。
必然的に響子さんと二人になる。
前にカフェへ行ったときの記憶が蘇った。
「恵里ちゃんの彼、可愛らしいのね」
あの時とは違って、声色にも言葉にもトゲはない。
「あ、はい。なんか子供みたいなヤツで」
「きっと恵里ちゃんが大人なのよ。あたしね、年上のくせに歩の方が大人なの」
「え、うそ」
「嘘じゃないのよ。いっつも私は怒ったり泣いたりしてて、それを歩が宥めてくれたり、間違ってたら怒ってくれたり。甘えてるの」
歩の「いい彼氏ぶり」が感じられる。
きっと歩も愛情を持って接しているんだと思う。



