「もうすぐクリスマスだろ? 何かと要りようだから」
そう言って突っ伏した歩に、もはや中学までの面影はない。
それに引き換え高校に入って何人目かの彼氏と別れて一ヶ月の自分。
あれ以来めぼしい人なんていないし、クリスマスなんてただの冬休みだ。
軽くため息をつくとカップに入っている紅茶が揺れた。
「そっか。あたしをダシにしてまで金稼ぎしてる理由がわかったよ」
厭味たっぷりに返す。
良かったね、なんて素直に祝ってやるもんか。
「はは、何それ。ヒガミ?」
歩が起き上がる。
当たっているだけに反論できない。
勝ち誇ったような顔をした彼は、もうすっかり冷えた紅茶をグビッと最後まで飲んで立ち上がった。
「じゃ、また来週ね」
ベッドからダウンジャケットを引っ張り、部屋を出て行った。
余裕ぶっこいちゃって、何あれ。
悔しいから見送りなんてしてやらない。
下から母の声が聞こえた。



