冷たい雨が降り注ぐ、そんな静まり返る夜の工場の駐車場。


『はぁ…はぁ…』


血のついたナイフを修二は握り締めながら、息を切らしていた。


『お、お兄ちゃん…』


水溜まりの中に、崩れ落ちたように座り込む女性が呟いた。


『はぁ…くっ!!』


修二は血のついたナイフを地面に投げ捨てた。


すると、どこからともなくパトカーのサイレンがこだまする。


『杏菜(アンナ)…行け!!』


雨に濡れる修二は声を荒げた。


『で、でも…』


水溜まりの中に座り込む女性=杏菜の声は震えていた。


『行けって!!』


修二は大声で怒鳴った。


杏菜は立ち上がり、雨混じりの涙を拭きながら駆けて行った。