街に、春が訪れようとしている。
残り雪の隙間から、ふきのとうが頭を覗かせている。
今日も短大の講義を終えて、わたしと静奈はアパートの近くのスーパーマーケットに立ち寄った。
夕飯の食材を買うためだ。
鮮やかな色のパプリカを手に取り、鮮度を確かめているわたしの肩を叩いたのは静奈だった。
「パプリカ買うの? 今日は何を作るの?」
わたしは首を振ってパプリカを元の位置に戻した。
そして、ひとつ息を吐く。
〈どうしよう。最近、困ってる〉
静奈は人差し指を左右に振って、小首を傾げた。
「困ってる?」
〈レパートリー、増やさなきゃ〉
健ちゃんと暮らすようになって、わたしは初めてお母さんの凄さを思い知った。
毎日の献立を決めることが、こんなにも大変だったなんて。
「幸せな悩みだね」
静奈はわたしをからかうように笑った。
「私、お菓子買ってくる。入り口のベンチで待ち合わせようよ」
〈分かった〉
肉料理にしようか魚料理にしようか。
静奈と別れて、悩みながらひとりでうろうろしている時だった。
不意に、肩を叩かれた。
残り雪の隙間から、ふきのとうが頭を覗かせている。
今日も短大の講義を終えて、わたしと静奈はアパートの近くのスーパーマーケットに立ち寄った。
夕飯の食材を買うためだ。
鮮やかな色のパプリカを手に取り、鮮度を確かめているわたしの肩を叩いたのは静奈だった。
「パプリカ買うの? 今日は何を作るの?」
わたしは首を振ってパプリカを元の位置に戻した。
そして、ひとつ息を吐く。
〈どうしよう。最近、困ってる〉
静奈は人差し指を左右に振って、小首を傾げた。
「困ってる?」
〈レパートリー、増やさなきゃ〉
健ちゃんと暮らすようになって、わたしは初めてお母さんの凄さを思い知った。
毎日の献立を決めることが、こんなにも大変だったなんて。
「幸せな悩みだね」
静奈はわたしをからかうように笑った。
「私、お菓子買ってくる。入り口のベンチで待ち合わせようよ」
〈分かった〉
肉料理にしようか魚料理にしようか。
静奈と別れて、悩みながらひとりでうろうろしている時だった。
不意に、肩を叩かれた。