紫が振り向くと、ちょうど和哉が部屋に入って来るところだった。



「あれ、なんだい、座って待っていたらよかったのに」



それぞれ、壁と窓にへばり付くようにして立っていた紫と房子を見て、和哉が笑った。



「あ、あの、素敵なお住まいだと思って、見とれていたんです」



紫は、しどろもどろに答えた。



和哉は、明らかに緊張した面持ちの紫にやさしく微笑んで、



「とにかく、よく来たね。まあ座ってよ」



と、ソファに促した。