「…あ、ああ、金魚すくい?いいわよ」 はっと我に返った房子が的屋に金を渡した。 幸子は、小さなポイを受け取って上機嫌で水槽の前にしゃがんだ。 浅く水をはった水槽では、無数の金魚が自由気ままに泳いでいる。 同じ金魚でも、真っ赤だったり白かったり。 黒い出目金も、格好いい。 水の中の金魚を見ているだけで、涼しげだった。 そんなふうに、しばらく幸子の奮闘を眺めていると、 「…実はね…」 と、紫の隣で、房子が重そうに口を開いた。