(市哉さんは、それでもいいのかしら…) 資産家の次男が、どこの馬の骨とも知れぬ女と手をつないで歩いている― 紫の脳裏に一瞬、そんな悪い噂が立つ光景が浮かんだ。 だからといって、今は手を振りほどく気にもなれない。 紫は歩きながら、つないだ手を見つめた。 しっかりと握られた市哉の大きな手から、幸子の手とは違った温もりを感じた。