真紀の顔はボーダーラインに向かって、どんどん突き進んできた。

 オンラインで一瞬止まる。

 耐え切れず、目を閉じた。

 バカだな、俺。

 これもまた、イエスと言っているようなものじゃないか。

 唇に何かが軽く触れた。

 それは間違いなく真紀の唇。

 柔らかくて、少しだけ湿っぽくて。

 それはすぐに離れた。

 二十一歳にしてファーストキス。

 目を開けると真紀の顔はまだすぐ近くにあった。

 お互いに体勢を整えると、今度はどちらからともなく抱き合い、唇を重ねる。

 なぜだかわからないけれど、すごく気持ちいい。

 止められなくて、体の奥から何かが溢れ出てくる。

 湿ったバスタオルを引き剥がすイメージが脳内を過る。

 マズい。

 気をしっかり持たないと、俺こそ真紀を犯してしまいそうだ。

 俺は理性という不確かなものに初めて頼った。

 真紀の意思で次第に深くなるキス。

 上がっていく体温と息。

 一つ目のボーダーラインをへし折ってしまった俺たちは、既に二つめのラインギリギリのところまで来ていた。