一時間後チャイムが鳴った。

 玄関の覗き穴を見ると、あいつがこちらを覗いている。

 静かにゆっくりとドアを開けると、彼女は満面の笑みを見せた。

「えへ。来ちゃった」

 寒気がしてドアを閉めようとすると、ドアが閉まる前に彼女も外からドアノブを引く。

「ちょっと!」

 あっけなくドア引きに敗れた俺は、仕方なく彼女を家へと入れた。

 改めてこの佐原真紀を紹介しよう。

 高校三年の時のクラスメイト。

 サコトとサハラ、お察しのように出席番号が前後だったのをきっかけに仲良くなった。

 真紀は学年でも有名な「じゃじゃ馬娘」で、ゲーセンでヤンキー四人組に絡まれた時、全員を叩き潰して警察に突き出すという偉業を成し遂げたこともある。

 部活やら何やらで当時は真っ黒に日焼けしていたが、今では花の女子大生。

 しかも名門M大だ。

 髪形を変えて化粧をすると女は化けるらしく、当時とは雰囲気が全く違っている。

 何というか、女に見えるようになった。

 そんな彼女、佐原真紀は今、大きなヴィトンのボストンバッグを横に携え、俺のテーブルの前であぐらをかいてリラックスしている。

 何だろう、この状況。