ヴー ヴー ヴー

 真紀の携帯が鳴り出した。

 それを取って画面を見るが通話ボタンを押そうとしない。

「電話じゃないの?」

 俺が問うと暗い表情をしたまま頷き、携帯を耳に当てた。

「もしもし」

 無表情で静かな声。

 想像がつく。

 別れた彼氏だと。

「わかった。メールで送っとく」

 通話は一分以内で終了した。

 そのままぽいっと携帯を投げ出す真紀。

「何だって?」

「荷物まとめたから、送り先教えろって」

 ああ、そういうこと。

 確かにあのボストンバッグ一つじゃ全部は持ち出せないだろう。

「ここの住所、教えて」

「うん」

 真紀は再び携帯を取り、俺が言うまま文字を打ち込んだ。