それから

軽い虚無感と

現実感のない感覚の中で

詳しい検査が行われていった

わかったことは

それが脳を圧迫して

脚の麻痺が起こっていること

そして

やはり

悪性であること



入院してすぐの検査にも

あったのだ

だからこそあの担当医は

握り潰した?

私を他の医師に渡さないように?



グレードは4

望み通り

こんなに早く願いは通じるものか



ぼんやり思った





知らない過去

この病気も過去の闇から

忍びよって来たのだろうか

病気を苦にして自殺未遂…

そんな理由もある

私は記憶をなくすまえから

とっくに絶望していた

そんな可能性もある

そうだとしたら

殺されなくともじきに死ぬだろう

私の見知らぬ恋人はそれすら待てず

私を手にかけたのだろうか?

…知っていたんだろうか

死期が近いことを

恋人が?

私は?

告知は?



すべてが憶測

憶測

憶測






憶測しかない

なにもわからないのだ

確かなことは

本当になにもない

どんな衝撃的な事実も

私にはただの不確かな

推測の種以上のなにものでもない


嘆く余地さえ与えられない

出来事が私には起きない

起きても

それがなんの手応えも産み出さない

私には人生が生まれない



虚脱しながらそう思った

この体すら

失われる

体が失われたあと

私は

何者になるんだろうか