「みてみて~、びーちゃんはあかよ~。よっちゃんのは、あおね」

「ほんとだ。ビーちゃん赤い水着可愛いね。……はぁぁぁ」

良子は更衣室の出入口に『身だしなみ最終チェックを!』と言わんがばかにそびえ立つ等身大鏡に向かって、深い深いため息をついた。

白いTシャツからのぞく足は真っ白で、細くもなく長くもなく、けれどまあ許容範囲内。

いけないのはその足の付け根辺りにチラチラ覗くくすんだ紺の水着である。

良子の後ろを通る華やかな女子高生らしき集団がクスクス笑っている。

自分の事を笑っているという確証はないのに、クスクスは良子の気持ちを嘲笑われたピエロにしていく。

よくある惨めな気分だ。

(負けるな、良子!)

良子は玉置の似合わない黒ブチメガネを思い浮かべ、上を向いて涙をこらえると

「ビーちゃん行こう!」

と無理矢理笑顔を作った。