振り返った良子の視界にはビーちゃんと……灰色のキャップを被ったメガネ男。

オタク……そんな言葉が似合うその風貌。

「……た、玉置君?何?どうしたの、それ?」

「あ?これ?」

まるで似合わない黒ブチメガネを得意げに指差すあたり、玉置はそれが似合っていると思ってるいに違いない。

「……目ぇ悪いの?」

一応聞いてみる。

「いや。変装に決まってんだろ。今日はビーちゃん一緒だからよ。絡まれたりしたら面倒くせぇだろ?」

「あ……うん。そう言われればそう……かも」

(たまに、意外と偉いんだよなぁ)

良子は素直に玉置の言葉に感心した。

テレさんの店の手伝いを文句も言わずにするし。

今日なんてビーちゃんのためにオタクに変装している。

「どうよ?これ。優等生っぽいだろ?絡まれなさそうだろ?」

玉置は鼻の穴を膨らませながら今度はメガネを上下させる。

「うん。に、似合う……」

『メガネ=優等生』とは短絡的すぎて賛成できないけれど、玉置のその気持ちに心を打たれた良子は小さな嘘を吐いた。