「…〝エメラルドの都〟…?」


その聞き慣れない単語を、アオが反芻する。


「そう、かかしが言ってた。そこにうーちゃんを待っている人がいるって。たぶんオズの居る場所だよ」

「目的地の名称が分かっただけで、行き先は変わってないわけか」


「みたいだね。都っていうくらいだから、大きいのかなー。まぁ結局おれには場所まではわかんないんだけどねぇ」


相変わらずリオがやる気の無さそうに言いながら、うららに視線を向ける。
その視線を代わりに受けながら、傍に寄り添っていたソラが口を開いた。


「少し、休ませてあげてください…いろいろ、体に疲れが溜まってたんです…いろんなことがいっぺんに起こったから…」


まるで保護者のような口ぶりで話すソラの腕の中で倒れこむように眠るうららは、記憶の一部を取り戻すと同時に意識を失ったまま、まだ目を覚まさない。

夜は交代制で見張るということで〝夜眠らない〟リオを中心にそれぞれ休んでいるはずだったが、人の叫ぶ声に、騒ぎに、結局みんな目を覚ましていた。

その後再び眠ることはできず、わずかな仮眠だけで朝を迎えた。


「いちいちそいつの記憶探しに付き合ってたら、いつまで経っても帰れねぇじゃねぇか」


眉間に皺を寄せたままレオが呟き、言葉の先にいたソラが苦笑いを漏らす。

その反応にレオは更に不機嫌になったようで、黙って外に出て行ってしまった。