そして中学2年の時、〝それ〟は起こった。
ココロとカラダのバランスが保てなくなったとき、リオの脳が許容量をオーバーしたのだ。
リオのカラダはとうとう思い出すという行為さえ、拒絶した。
リオは一週間、目を覚まさず眠り続けた。
そして漸く目を覚ましたリオは、何ひとつ思い出すことができず、すべて綺麗に〝忘れて〟いたのだ。
目覚めたリオに両親が記録ノートと日記を渡し、ひと通りすべてを説明した後、諭すように言った。
『あなたが忘れたくないものだけ、あなたが、選びなさい。それだけでいい。他はもう、捨てなさい』
そうして今のリオができあがった。
高校に入学してからは記録障害であることが開示され、人と関わることも学業も自然と免除された。
それはリオにとってとても気楽な日々だった。
自分さえ見失わなければ生きていけると知ったから。
失っても仕方ないものがあると、知ることができたのだから。



