「…とうもろこし畑だ」


ぽつりと、リオが呟いた。

絶えず続いていた緑の草原に少しずつ違う色が混じり、地面から伸びる背の高く太い茎の先のふくらみからふさふさのひげが、のどかに揺れて風にさざなむ。
わずかに香ってくるのは、青っぽくあまい匂い。


「──食料は確保できそうだな」


わずかに表情を緩めたアオもやはりどこか安堵したように、メガネのフレームを押し上げた。

ふ、と張り詰めた空気がわずかに緩むのを感じて、うららもソラもホッと胸を撫で下ろす。
不安に駆られながら速めていた歩調も、自然と緩んだ。


「畑があるなら水源も近いかもな。現実と同じ理屈なら」

「もう、生で喰えたりしねーのかアレ」


「じゃーレオ、トライしてみてよ」

「は? ざけんなテメェでやれ」


「今日はもうこの辺で休もう。いったん今後の計画も立て直した方がよさそうだな」


さっきまで空気を凍らせていた元凶の3人は、こっちが驚くくらい普通に会話していた。

うららはいささか巻き込まれたような不満はあったけど、今は安堵の方が大きかった。

得体の知れない場所で、だけどこの世界の影響を確実に受けながら。
改めてひとりではなかったことに、安堵した。