「───クソっ…! 街とかねぇのかよ?! もしくは家!!」


うららが示した方角へと、先頭を行くレオが眉間の皺をこれでもかというくらい深めながら苛立ちを隠さず声を荒げる。
それに答える者は誰もいない。


「なんなんだよどーすんだよもう日が落ちるってのによ…!」

「…今日はもう、野宿しか無いだろう」


淡々と冷静に言ったのはアオで、全員が静かにため息を漏らした。

一番最初に空腹を訴えたのはリオで、それからアオの指示のもと各自持ち物をチェックした。

カバンは誰も持っていない。
携帯は圏外、使い物にはならないだろう。

ペンや生徒手帳は論外。
財布に入っているお金もここではきっと無意味。

腕時計の針は動かない。
だけど時間は流れている。

唯一、レオの持っていたライターと、リオが持っていたソーイングセットだけが、この世界でも役にたちそうなものだった。


「腹が減るということは、ここでの時間が確実に自らに影響しているということだ。ケガをしたら出血するし、襲われたら命を落とす可能性もある」


警告のように呟いたアオの言葉を、全員どこか不安そうに受け止める。
今現在の状況から、誰ひとりその最悪の想定を否定しきれなかった。

この旅路に危険はないと…マンチキンを発ったあの瞬間までは、多分誰もがそう思っていた――