「本題に入ろうか」
苛立ちを滲ませた声が自分達に向けられ、うららとソラは声の方へ視線を向ける。
その声の先には3人の少年たち。
うらら達に一番近くにいたメガネの少年が、口を開く。
「君がオズの場所を知っていると魔女は言っていた。道がどうとか言っていたようだが、居場所さえ分かればいつまでもこうしているのは、時間の無駄だ。オズは、どこにいるって?」
「……っ、…」
その視線に、声音にうららは反射的に体が怯んだ。
咄嗟に声も出せないほどに。
「道さえ分かれば、俺はひとりで行く。仲良しごっこをする気はない」
「同感だな。おまえの記憶だとかってのは、オレたちには関係ねぇことだ」
賛同の声を上げた金髪の少年が、ため息交じりに視線を上げる。
「オレはさっさと戻りてぇんだよ…!」
呻るように吐き出した言葉に思わずびくりと身構える。
威圧のある声に責め立てられるようで、一歩引きながら、足元に視線を落とした。
――この道の先にオズはいると、北の魔女は言っていた。
金色に光っていたレンガの道は、いつの間にか黄色の道へと落ち着いていた。
その道は丘の向こうまでまっすぐ伸びていて、果ては見えない。
慌てて口を開いたのはソラだった。
「でも、絵本の中とは言ってもなにがあるか分からないし…僕も『オズの魔法使い』のストーリーを、よく覚えていません。偶然でも必然でも目的は一緒なんだから、協力した方が…」
ソラの提案に3人の少年たちは一様に視線を向け、それぞれが意思を以って口を開いた。
「──協力? 自分ひとりでなにもできないだけだろう」
「馴れ合いなんて、弱えヤツのすることだ」
「…どーでもいーよ、帰れるなら」
――なんて協調性の欠片もないメンバーなのだろう。
うららも人のことは言えないけれど、この人たちの願いごともまったく想像つかなかった。
そもそも彼らが何かを代償にしてまで、叶えたい願いがあるようには思えなかった。



