―――――――…


「ドロシー様、お時間です」


豪華な朝食を取り、食後のお茶を口にした時。
昨日と同じメイドの声が、扉の向こうでノック音と共にうららを呼んだ。


「──はい」


もともと少なかった会話が止む。

それからうららはゆっくりと席を立ち、扉の方へと向かう。
視線を受けて歩き出すうららに、誰ひとり口を開かなかった。

だけどうららは、昨日のリオの言葉を聞いて、決めていたことがある。

ぴたりと途中で歩みを止め、振り返る。
できるだけ力強く笑って、はっきりとうららは口にした。


「…帰るときは…みんなで、帰りましょうね…例え忘れてしまっても、みんなで一緒に…!」
 

オズがその要望を叶えてくれるのかは分からなかったけれど。だけどそれくらい叶えてくれてもいい気がした。


――オズは偉大な魔法使いなんだもん。


その気持ちがみんなに伝わったかどうかは分からなかったけれど、今度は振り返らずに部屋を出て扉を閉めた。


長い廊下をメイドの後ろを黙って歩きながら、ぎゅ、と自分の手を握る。
ようやく会えるということに、今さらながら緊張してきた。

しばらく柔らかな絨毯を進み、やがて壁一面の大きな扉が姿を現した廊下の先でメイドは歩みを止める。
そこで振り向き扉の前で一歩下がりうららに道を譲ると、一礼して去って行ってしまった。

――ここがオズのいる、玉座の間。

一歩、足を踏み出すのと同時扉が開いた。
れに驚きながらも、招き入れられた緑の玉座へとうららは足を踏み入れた。