「──オレに…オレに出来ることなんて、たかが知れてた…世界を変えられるなら、オレだって変えたかった」


その、声は。


「ずっと…違う世界を、望んでた…こんな世界、認めたくないって。あいつを守ってやれるような、そんな、自分を…」


はっきりとではなく、別の声が混じるようなそれは。
ライオンから発せられた声は。

紛れもなくレオの声だった。


「レオ…?!」


リオが叫んだ声は、届いていない。
激しい雨粒と風が吹き荒れ、レオの声すらも途切れ途切れにしか聞こえなかった。


「だけどそれは、望んだんじゃない…願ったんじゃない。投げ出していただけだったんだ」

「…どういう、ことよ…なんでアンタが、ソコにいるのよ…! なんで…」


「だけどオレには、まだ捨てられないものがある…諦められない、ものがある。これ以上オレなんか信じるヤツを、裏切るのだけはゴメンだ…!」


ライオンの輪郭が徐々に小さくなり、縮んでいく。
それはやがて人のカタチへと、そして見慣れたレオの姿へと変わっていった。


「い、や…イヤよまさかアンタ、アタシを消す気…?! やめて…まだ手に入れてない、アタシの願い…叶ってない…! やめて…!!」


レオの手が東の魔女の喉元へと移り、魔女は明らかな恐怖の悲鳴を上げた。


「──うららは返してもらう。おまえは在るべき処へ、かえれ」